ノクターン

「外のレクサスってお姉ちゃん?もう来ているの?」


その時、賑やかな声で妹が帰ってきた。
 

「ちょっと。美奈ちゃん、ご挨拶して。」

と母がたしなめる。
 

「はじめまして。妹の美奈子です。」と、智くんを見て、

「うわ、イケメン。」と呟く。
 


妹は、今年 大学を卒業して保育士をしている。

土曜日も午前中は 仕事の日が多いらしい。
 


「美奈ちゃん、覚えているかな。小さい頃 夏に遊んでもらった事。別荘の智くんよ。」

私は 妹に智くんを紹介する。
 

「別荘の智くんって、廣澤工業の御曹司?お姉ちゃん、玉の輿じゃない。」
 
「美奈ちゃん、失礼でしょう。」

母はハラハラしているが、私と智くんは、その自由さに笑ってしまう。
 

「僕は次男だから。ただのサラリーマンなので。全然、玉の輿じゃないんだ。」

智くんは妹に 優しく説明してくれる。
 
「いやいや、お金持ちの次男って。逆に理想でしょう。お姉ちゃん、すごいよ。」
 


「麻有子は、お前が遊んでいる頃 一生懸命勉強していたからね。」

パパその通りです。

ちゃんと見ていてくれた父の言葉に 妹も私もしんみりする。
 


「蟻とキリギリスって感じかな。」
 

「うーん、それも微妙に違う。」

私達は、失礼な妹に爆笑しながら 和やかな時間を過ごした。
 
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