ノクターン
「なんか、恵まれ過ぎていて いいんでしょうか。」
私の声は、幸せ過ぎて 上ずってしまう。
「いいの、いいの。こんな可愛いお嬢さんに来てもらうのよ。今まで育てたご両親のこと思ったら まだまだ足りないわ。」
お母様は、お父様と相槌を打ちながら言う。
「早めに 麻有ちゃんのご両親に 挨拶だけでもしないと。いつ軽井沢に行けるかな。」
お父様は、手帳を持ってくる。
「毎週でなんだけど 来週の日曜日は、麻有ちゃんのご両親 都合はどうだろう。その後から忘年会が入ってくるから。」
私は、母の素頓狂な声が 聞こえる気がした。
「あの、私、ちょっと電話してみます。」
私も、廣澤家の家風に従わなければ。
私達の為に、忙しいお父様が 時間を割いて下さるのだから。