ノクターン

「なんか、恵まれ過ぎていて いいんでしょうか。」

私の声は、幸せ過ぎて 上ずってしまう。
 
「いいの、いいの。こんな可愛いお嬢さんに来てもらうのよ。今まで育てたご両親のこと思ったら まだまだ足りないわ。」

お母様は、お父様と相槌を打ちながら言う。
 


「早めに 麻有ちゃんのご両親に 挨拶だけでもしないと。いつ軽井沢に行けるかな。」

お父様は、手帳を持ってくる。
 
「毎週でなんだけど 来週の日曜日は、麻有ちゃんのご両親 都合はどうだろう。その後から忘年会が入ってくるから。」


私は、母の素頓狂な声が 聞こえる気がした。
 

「あの、私、ちょっと電話してみます。」



私も、廣澤家の家風に従わなければ。

私達の為に、忙しいお父様が 時間を割いて下さるのだから。
 

< 97 / 270 >

この作品をシェア

pagetop