ノクターン

リビングを出て、私が電話をかけると
 
「来週!」

と予想通り、母は驚いた声を出した。そして、
 
「忙しいご両親が せっかく都合つけてくださるのに、ウチが 断る理由なんてないわよ。」

と、いつになく しんみりする事を言ってくれた。
 


「ママ、ありがとう。パパに 新しい洋服 買ってもらってね。」

私も ほんのり温かい気持ちになる。
 
「できれば、美奈ちゃんも紹介したいから 都合をつけてもらって。」

そう言って電話を切る。 
 

「軽井沢の両親も、日曜日で大丈夫です。お手数をおかけしますが、宜しくお願いします。」

リビングに戻り、さっそく報告する。
 

「よかった。それじゃお母さん、近くのホテルに 食事の席を予約しておいて。」

とお父様が言う。

お母様の笑顔も とても優しい。
 


「麻有ちゃん、紀之達にも紹介しないと。この間 沙織ちゃんと電話していて 智之の事話したら 麻有ちゃんに会いたがっていたわ。」

お兄様ご夫婦のこと。



どんどん廣澤家に、受入れられていく自分が怖い。
 

智くんと私は、ご両親の言葉を 笑顔で見つめ合いながら聞いていた。


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