敏腕弁護士との政略結婚事情~遅ればせながら、溺愛開始といきましょう~
女性の方は、彦田(ひこた)聖子(せいこ)
櫂斗のアシスタントとして同行した、二十八歳のパラリーガル。
二人とも、都内でも有数の大手事務所、三田村(みたむら)総合法律事務所の所員だ。
先ほど結審した、医療過誤訴訟の上告審で、華麗なる勝訴を手中にしたばかり――。


櫂斗の隣で、聖子は事務所に電話を入れていた。


「所長! お疲れ様です、彦田です。無事、勝訴しました!」


所長に勝訴の報告をする彼女の声は上擦り、弾んでいる。


「はい。はい……。ありがとうございます。では、今日は私も先生も、このまま失礼します」


電話を切り、スマホを大きな黒いショルダーバッグに収めながら、ウキウキした様子で櫂斗を見上げた。


「所長から。『おめでとう、お疲れ様です。今日はゆっくり休んでください』とのお言葉でした」

「そうですか。報告、ご苦労様です」


所長から労われる殊勲者の櫂斗は、特段表情を変えない。
法廷で予期せぬ事態が起きても、いつもクールで物怖じしない。
まだ三十歳と若いが、堂々とした弁論はブレることなく安定していて、依頼人に絶対的な安心感を与える。
もちろん、腕も確か。
彼には、日々、名指しでの弁護の依頼が絶えない。
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