屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 …男の方は
十代で結婚して、すぐに離婚
その奥さんとの間に
生まれた子供が一人いる
その後に付き合ったのが、俺を棄てた女
そいつが今どうしてるのかは知らない
今の両親 ―――
毛布とパンと、本を与えてくれたし
浮世離れしたとこあるけど嫌いじゃないよ
俺にとっては、悪い人達じゃない
ただ、ずっと心の中にある
漠然とした虚無感とか
人を好きになる気持ちが
よく理解出来ない理由とか
そういう物全部、自分で納得出来たんだ
だからユカも ―――
会ったその日に告って来るとか
軽いし、馬鹿じゃねえの
お前らみたいなのが
俺みたいなの作るんだよって
でも…あいつは毎回追って来た
だから初めて… 信じてみようと思った
けど、もういいんだ 」
「 ――― 灰谷 」
「 アズには黙ってて
… 色々な事があって
やっと落ち着いて、幸福そうな今
棄てられた話とかしてさ
また嫌な事、思い出させるの嫌だし
記事は親父が握り潰したけど
俺が施設から引き取られたって
調べてる奴らがいた頃
結構、適当に説明しちゃったし
それをあの人、信じてるから 」
「 しないよ 」
「 ユカの事も
… 相手の奴、すごくいい奴だし
常に側にいられない俺より
合ってると思うし、責める気も無いよ
貴方達の付き合い基準で
俺は『恋人同士』ってものを見てたから
若干認識、おかしいのかもしれない
これが多分『普通』なんだ 」