屋上海月 〜オクジョウクラゲ〜
「 …"やっぱりな"って
そう思っただけ
ショックじゃなかったのが
逆にショックだったよ 」
俺は 何も答えられずに
「 …ここ 」
「 ―― え? 」
灰谷が立ち止まったのは電柱前
積み上げられた、家庭ゴミの山
「 … 俺さ、生まれてすぐ
ギターケースに入れられて
ここに棄てられてたんだ 」
カラスが鳴く
「 施設は隠してたけど
当時はニュース、新聞にも載って
受験前に、図書館に通ってた頃
何となく見てた、古い過去記事で
その事件を偶然みつけた
時期的に、俺かなっていうのと
施設にいたのは、うっすら覚えてたから
直接、今の父親に聞いてみたんだ
"おそらく、俺を棄てた女は
昔、屋敷で働いてた使用人
自分はその頃
一番目の妻を亡くした頃で
私は彼女に、とても慰められたんだ"って
そう言ってた
そしてここからは
別の人間に聞いた事だけど
元々その女は
金が目当てて親父に近づいて
信用を得た後、屋敷から金を持ち出し
音楽やってるヒモと逃げた ―――
DNA鑑定したけど
今の親父と血の繋がりは無い
顔も全く似てないし
その女にも似てないみたいだから
男の顔にソックリなんだろうね
―― モニターに映るアズに会ったのは
ちょうど俺が、棄てられたって知った日 」