あなただったんだ
「淋しかったんじゃないかな」

「別れるときに、そう言ってた。あなたが悪いのよ、って。仕事の方が大切なんでしょう、って。比較する対象じゃないのに。僕は、ちゃんと、あいつを好きだった」

「あたしも、切なかったよ。電話の期間がどんどん空いて行って・・・会う時間も少なくなっていって・・・まぁ、そのころにはもう、夏海さんが心にいたんでしょうけど」

私は、自嘲的に、笑った。

「それでも、よかったの。可能性が、0でなければ、繋がっていたかった。悠也の心の中に誰かがいることに心のどこかで気付いていても、信じていたかった。私をまた、好きになるって」

涙が一筋、私の頬を伝う。

「ごめんな。きっと、夏海を淋しくさせた、僕が悪かったんだ」

「謝ってもらうために、あなたに会いたかったんじゃないの。・・・なんで会いたかったんだろ?きっと、悠也との共通点を見つけたかったのね。あなたの純粋さは、悠也に通じるものがある、今分かったわ」

「木原さんは、夏海とは違うタイプだね。なんか、可愛い、って感じ」

「年下のあなたに言われちゃうか・・・」

「褒めてるつもりだよ。木原さんのこと、タイプだって男、割といるよ」

「でも、あなたじゃない、でしょ?」

「まぁ、ね」

と苦笑する豊。

「それでも、ねぇ、友達として。たまに会ってくれない?彼女が出来るまででいいから」

淋しさを、こんな方法で紛らわすのは間違ってる、そう思っていても。

「じゃあ、月に1回。第1日曜日に、どこかに行こう。それで木原さんの気が紛れるなら」

「ありがとう。豊くん、って呼んでもいい?」

豊は少し照れながら、

「じゃあ、僕は、奈菜ちゃんって呼ぶよ」

こうして、失恋した者同士の月イチデートの約束が交わされたのだった。
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