【女の事件】遺恨の婚礼歌
第3話
11月30日の朝のことであった。

ひろつぐが出勤してきた時、部下のS内さんは出勤していなかった。

ひろつぐは、先に来ていた女性従業員さんに聞いてみた。

「おはよう。」
「おはようございます。」
「あれ、S内くんはどうしたのだね?」
「S内さんは、今朝方実家のおじいさまの容態が悪化したので、このあとの特急列車と新幹線を乗り継いで鳥栖の実家へ帰ると言うていました。」
「またふこうごととウソついて、ずる休みか!!」
「課長、どうしてS内さんに目くじらを立てているのですか!?」
「目くじらを立てて悪いか!!S内は勤務時間中に職場の庭園を使って、婚礼の事前撮りをしようとしていたから注意しただけなのに…オレに怒鳴られたことがつらいけんずる休みしとんや!!」
「課長…」
「何やオドレ!!文句あるのか!!S内のナマクラは12月を持ってクビだ!!オラ!!S内のデスクを今から整理するぞ!!」

ちょうどその時であった。

深江さんがエントランスの受け付けにいるので、受け付けに来てくださいと言う電話があった。

ひろつぐは『今は仕事中なのだぞ!!くだらないことで電話をしてくるな!!』と怒って突き返した。

しかし、深江さんはエントランスの受け付けにまだいた。

ブチキレを起こしたひろつぐは、深江さんに詰めよって行った。

ひろつぐは深江さんに『何やオドレ!!製造工場の工場長がキューデンに何しに来たのだ!!居座る気でいるのか!!』と怒ったあと、おいだそうとしていた。

深江さんは、ひろつぐに『そんな気持ちで今日1日持つのか…』と心配な表情で言うてから『頭を冷やしに行こう…』と言うて外へ連れ出した。

ひろつぐは、深江さんと一緒に喜田村の産業道路沿いにあるマクドへ行って、150円のカフェラテをのみながらお話しをしていた。

「S内は、オレから注意されたことに腹を立てて会社を無断で欠勤している…だからS内は12月いっぱいでクビにするからS内のデスクを整理していた…」
「どうしてそんなひどいことをするのかな…S内さんにどんな落ち度があると言うのだね…」
「S内は、勤務時間中に職場の庭園で婚礼の事前撮りをしていたから厳しく注意しただけ…言うことを聞かなかったので、ばつとして残業させた…S内はなまけているからばつを与えただけだ!!」
「ひろつぐさん…」
「S内にしっかししろと言うただけだ!!」
「ひろつぐさん…」
「なんや!!文句あるのか!?」
「ひろつぐさん…どうして社内恋愛のカップルさんたちに暴力をふるうのかなぁ…」
「職場の敷地で婚礼の事前撮りをしているのが悪いのだ!!」
「ひろつぐさん…」
「深江さん、オレは今までガマンしてきたのだよ!!会社のため、姉のために恋をすることもガマンしてきたのだよ!!ガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンしてガマンして…なにもかもガマンしてきたのだぞ!!わかっとんかボケ!!」
「ひろつぐさんが今までガマンしていたことは分かっているよ…会社のため、お姉さまのために恋をすることをガマンしていたことは分かっているよ…分かっているから何とかしてあげたいと思って…」
「やかましいのだよ!!(経営者名)の手先!!…ショッケンのスタッフは社内恋愛にうつつばかりぬかしているからナマケモノなんだよ!!だからS内をクビにすると決めた!!文句あるのかコラ!!」

深江さんは、大きくため息をついてからひろつぐにこう言った。

「ひろつぐさん…社内恋愛のカップルさんたちに暴力を繰り返すのであれば、ショッケンやめたらどうかな?」
「オレにショッケンをやめろと言いたいのか!?」
「ショッケンのスタッフさんの社内恋愛に目くじらを立てて、暴力をふるいつづけるのであれば、やめた方がトクサクだと思う…それか、社内恋愛を認めていない製造工場へ戻る?それとも、ケーオー(ショッケンの親会社)やめて、社内恋愛と無縁の会社へ転職した方がいいと思うけど…」
「オレは…生まれた時から、嫁さんなんか必要なかったのです…」
「そうだな…ひろつぐさんはお嫁さんなんか必要ないみたいね…」

深江さんは、ぶつぶつと言いながらカフェラテをのんでいた。

ひろつぐは『社内恋愛推進会社を作ったナマクラジジイに文句言いたいわ…どいつもこいつも…』と腹を立てていた。

その頃であった。

ちえみは、北高下にあるコロンボ(パチンコ店)にいて、お目当ての台でパチスロ遊びをしていた。

茶髪でラメラメのカチューシャをつけて、派手な色のマニキュアをつけて、色の濃いギャルメイクをつけて、へそ出しでミニスカ姿でパチスロ遊びをしているちえみは、持ち合わせがなくなるまでパチスロ遊びに夢中になっていた。

持ち合わせがなくなると、スマホを取り出して電話をして、男を呼び出した。

正午前のことであった。

ちえみは、喜田村のマクドで男と待ち合わせをしていた。

男と合流したちえみは、腕を組んでマクドのカウンターへ行って、男のカネでビッグマックのセットを注文していた。

その時の様子を、営業回り中のキューデン本社の男性スタッフさんふたりが見ていた。

ちえみは、男のカネで注文したビッグマックのセットをたらふく食べていた。

その様子をみた男性スタッフさんふたりは声をひそめて言うた。

「おい…」
「なんだよ…」
「あれ…総務の課長のお姉さんだよ…」
「えっ?総務の課長のお姉さん…」
「ああ…40なかばなのに…ギャルメイクで茶髪でへそ出しでミニスカ姿だよ…」
「ホンマか?」
「ホンマやで…」
「何か気になるな…」

男性スタッフさんふたりは、ちえみと男の会話を聞き耳立てて聞いていた。

「ねえ、お願いがあるの…」
「お願いがある…」

ちえみは、モンキー顔の男にカネを求めた。

「パチスロ遊びをしすぎて、持ち合わせがないので困っているの…今夜のごはんを作るおカネがないのよ…ああ、カレーライスを作る材料費だけでもいいから…1万円…都合つけてほしいの…お願い…」
「カレーライスを作る材料費…」

ちえみは、カネをせびるためにラブホへ行こうよとモンキー顔の男に言うた。

「ねえ…ラブホへ行かない?アタシのブラジャーとショーツをつけてあげるわ…それも…ピーチジョンのカタログで買ったブラジャーとショーツよ…あんたの好みの…あのモデルさんがグラビアで着けていたブラジャーとショーツよ…それだったらさ…インナーもつけてあげるわ…キャミも一緒にどう?なんだったら…ショーツをあと2~3枚つけてあげるわ…なんだったら…パンスト破り3回をつけてあげるわよ…」

モンキー顔の男は、調子に乗ってサイフから200万円を取り出した。

「うれしいわ…こんなにたくさん…」

ちえみは、モンキー顔の男から200万円をせびった後、ポーチにしまいこんだ。

「おいおい…」
「200万円出したぞ…あいつ…」

このあと、ちえみはモンキー顔の男と腕を組んで喜田村のマクドからヤマダ電機の近くにあるラブホへ行った。

キューデン本社の男性スタッフさんふたりは、ラブホへ先回りして、ちえみとモンキー顔の男が部屋の中で何をしているのかをのぞいていた。

ちえみは、知らないうちに男たちからレイプの被害を受けていることにゼンゼン気がついていないので、心が大きく壊れていた。

この時、キューデン本社ではちえみがエンコーをしていると言うことがうわさになっていたので、ひろつぐはショッケンに居場所をなくした。
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