『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜
んー…
やっぱり実際の青空と桜のコントラストを
一度ちゃんと見ないと進まないな…
外を見た
雨
雨
雨
仕方ない…
なんとなく集中できなかった
私は大きく伸びをした
「あ、僕がいると気が散る?
集中できないかな?」
先生が少し後ろに振り向き気味で言った
「いえ、別に…」
雨が降ったのも
集中できないのも
先生のせいではない
私は手を止めて
先生の後ろ姿を見た
ん?
あの肩幅…
なんだろう…
なんか記憶があるような骨格
気のせいかな…
このスーツ…
スーツの色
昨日と同じスーツだけど
外の雨の色と重なって違う色に見える
あの色…
いつ?
思い出しそうになった時
先生がまた少し後ろを見た
「ちょっといいかな…」
「はい」
「美術部の名簿作ってるんだけど
今年度の部長は立花さんでいい?」
先生はまたパソコンを見ながら言った
「え…でも…
毎年
3年生の1番名簿の早い人みたいですよ」
「ほとんど部活来ない人が部長でも
意味ないからね」
「特に活動もないから
問題もないと思います」
「美大の推薦とかで有利かもよ!」
「え…」
「今年度も来年度も立花さん部長やりなよ」
「本当に有利なんですか?」
「わかんないけど…
決まりね!
たちばな…すみれ…」
先生はパソコンをカチャカチャ鳴らした
「先生、私の名前…わかるの?」
「普通わかるでしょ!
だって、顧問だよ」
前の顧問は、
1年経っても私の名前を知らなかったと思う
「いい、名前だね」
先生がまた少しこっちを見ながら言った
「ありがとう…ございます
私も気に入ってます」
あ、このシルエット…
色と線が重なった