『先生の色』〜桜の下で始まった恋は、色を変える〜

私は目を閉じて
あの時の風景を思い出す



少しずつ色を重ねた


空、桜、雨、光…



すべてを重ねるのは難しくて…
でも描きたかった



今日は久しぶりに筆が進んだ



天気雨…
水滴…
傘…


先生…



また鼓動が速くなった



筆が止まった



描き始めてから1時間



パソコンの音がカチャカチャ聞こえた



「先生…」



「ん?なに?」



「まだいたんですね
私、集中してて…」



「ごめん、オレここにいると邪魔?」



「そんなことないです
…なんで、なんで毎日来てくれるんですか?」



「一応、顧問だから…」



「前の顧問は来なかったですよ」



「なんか、ここにいると安心する
でも、立花さんの迷惑になるなら
明日から教務室で仕事するよ」



「別に、迷惑…なんかじゃないです

先生、そろそろ桜が満開になりそうだから
明日、また一緒に見に行かないですか?
あ、無理だったらいいです」

先生の真似をして言った



「迷惑なんかじゃないです
誘ってください」

先生も私の真似をして答えた



ふたりで笑った



私は明日を楽しみにした



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