縁の下の恋


リョウはひたすらコンサートが、ただつつがなく終わってくれることを願った。



完璧を演じることに努めた。



この光を与えてくれているのは、きっと一理なんだ!と思いながら、演奏に集中した。


話しの部分はすべてカットした。



それが今のリョウの精一杯であった。


今を一生懸命やらないと一理には会いに行けないことぐらいは判っていた。



途中…涙が込み上げてきた。



照明の光がリョウに注げば注ぐほど、一理が自分のことを覗き込んでいるかのごとく思えて、今頃生死を漂っているのではないか…と、思わずにはいられなかった。
< 159 / 271 >

この作品をシェア

pagetop