縁の下の恋


否応なしにその日はやってきた。


仕事から一旦もどり普段はしない化粧をしクローゼットから何着かあるワンピースのうちなるべく喜ばれそうなわざとらしい洋服を選び身につけた。


まるで此処に両親達が居たら泣いて喜びそうな一理を自分なりに作り上げた。


場所は前もって聞いておいた。


玄関ホールで待っていると続々とまさに何処からこんなに上流階級の人達を集めたのだろうか、と感心するほどの人々が集まって来た。



一理が待っていたお陰で何とかスムーズに全員(15人程であろうか)が席に座ることができた。



口々に今日のピアニストは誰かを噂していた。



誰も聞かされていないのも不思議であった。



まるで日本でいうシークレットライブなのであろうか…



一理に盛んに聞いてくるものの一理自身解らないこともあり答えようもなく…



しかし何故か一理の胸騒ぎが激しくなってくるのも不思議でならなかった。


夕食のコース料理どころでなくなっていた。



いよいよ本人が登場の場面がやって来た。


一理は……


手に触れていたスプーンを思わず落としてしまった。
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