縁の下の恋


翌日いつも通り工場の横に立つ事務所に顔を出すと、いつもはまだ出社していないはずのプロジェクトのチーフが会議室から工場長と何やら身振り手振りしながら和やかに出て来た。


「やあ松平君おはよう…私が何でこんな早くにって顔してるね?」


「あっいえっ、おはようございます。何か不都合でもあったんでしょうか?」


「いやっ何っ、私もびっくりしたんだが、(小声になり)明後日なんだが工場長がお偉いさんに何やらピアノのコンサートって、まあ夕食会なんだそうだが、誘われたらしくて、それが苦手らしくて私にも一緒に行ってくれないかと誘われたんだよ。」



「あーー…そういうことでしたか。私はてっきり仕事のことかと」



「…あー松平君君にも是非、そうだ必ずだ。どれ程の人数かまでは聞かなかったが、やはり通訳の君には居てもらわないと…そうだ、明後日大丈夫だよね?またいつものお嬢様スタイルでな?なかなかの評判だよじゃあ頼んだよ!」


……あー、一理のもっとも苦手な仕事であった。



しかし…ピアノコンサートって…


夕食会とも言っていた。


まあプロの卵かもしれないし、聴いてみるのも、久しぶりかも…


一理の脳裏に夕べの微かに聞こえたピアノの音がぼんやり何故か思い浮かべるのだった。
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