縁の下の恋


「ああっっ、はいっすみません!あの、ええっ何か、(回りを見渡すとテーブルの全員が一理を心配そうに見ていた)」



「いつも冷静沈着な君が…どうかしたのか?あのピアニストのことなのかな?まあ、君が知っているのなら皆さんに紹介してあげるとか、頼んだよ!しかし…顔色がすぐれないようだが」



「いえっ…大丈夫です。ああっ、はいっ分かりました!」



一理はリョウの演奏の邪魔にならないように当たり障りのない言葉を選び説明をした。



皆口々にそんな有名なピアニストが此処に来てくれていることに感動しているように見えた。



その後は一理はリョウから目を離すことが出来なかった。



演奏がどんどん進んでいるにもかかわらず現実を信じることが出来ずにいた。




と…曲が終わり、リョウがほんの一瞬観客の方を見渡した。



何故に目が合ってしまったのだろうか…



いやっ、ほんの一瞬だから一理のことには気づかないだろう…



一理は自分にそう言い聞かせ通訳に専念しようと笑顔で話しかけた。



食事は喉を通るはずもなく話し掛けられても精一杯の作り笑顔で答える一理であった。



その時…



いきなり♪♪♪♪♪




流れてきたのは




乙女の祈り♪♪♪



これは…



この曲は…



一理の胸は張り裂けそうになった。
< 266 / 271 >

この作品をシェア

pagetop