授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
部屋に私の嗚咽だけが響く。

先ほど香帆さんが心配してドアの向こうから声をかけてくれたけれど、とてもじゃないけど誰かと話す気になれなくて「ひとりにして欲しい」とぞんざいな態度をとってしまった。

ベッドの縁に腰掛けて、手元の紙袋にいくつもの涙がぽたぽたと落ちる。愛犬のミミが心配そうにクンクンと鼻を鳴らして私の足元に擦り寄る。

はぁ、もうなにもかもサイテー。

どうして私が板垣さんと結婚しなきゃいけないの? そんなの絶対やだよ……。

しばらく泣きはらしてようやく涙が渇いてきた頃、ぐぅとお腹の虫が鳴った。

まったく、こんなときでもお腹が空くなんて……。

そういえば朝から何も口にしていない。私は手元の紙袋を開けてあんパンを手に取った。すっかり熱を失ったそれは冷たい。けれど、美味しそうな匂いは変わらず私の食欲を刺激した。ミミが「それちょうだい!」と尻尾をブンブン振って無邪気に催促してくる。

「これは駄目、さっきご飯食べたんでしょ?」

クーンと切なげに鼻を鳴らし、つまらなそうに部屋を出て行った。
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