授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
『菜穂か!?』

「黒川さん!」

あぁ、やっと話せた。恋焦がれていた彼の声を聞いただけで力が抜け、ヘナヘナとへたりこんでしまいそうになる。けれど、今なそんな感慨に浸っている時間はない。

「黒川さん、話せるのは五分だけなんです。あの――」

『五分? それなら先にこちらから言わせてもらう。蒲池さんの所へ行ったときに聞いた。君は大きな誤解をしているぞ』

「え?」

よほど言いたくて耐えかねていたことがあったのか、黒川さんは私が口を開く隙も与えず早口で言葉を並べた。

『前に南雲と俺がホテルに入って行ったところを見たと言っていたそうだな? いかがわしい場所だったのには違いないが、あれは殺人事件の現地調査のためだったんだよ』

げんち、ちょうさ……?

頭の中が真っ白になって、一瞬、そんな単語の意味さえ理解できなかった。

「でも、どうして紗季さんと?」

『自分の仕事に素人を巻き込むわけにはいかなかったし、それにホテル側の従業員が犯人とグルになってる可能性があったから、怪しまれないようにカップルを装う必要があったんだよ。誓って言うが、南雲はただの同僚で個人的な感情も関係もない。君にずいぶん失礼なことを言ったようだが、彼女にはきつく言い聞かせておいた。彼女も遊びが過ぎたと反省している』

つまりは、すべて私の早合点だったのだ。ほんのわずかでも彼を疑ってしまった自分が恥ずかしい。
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