授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
『菜穂、その婚約パーティーはどこでやるんだ?』

「ロワイヤルウィングの船上クルーズって言ってました」

『なんだって? ロワイヤルウィング? それは確かか?』

会社名を聞いた途端、驚いたように黒川さんの声が跳ねた。

『わかった。とにかく、俺は今でも君を愛しているし、ほかの男と結婚なんてさせる気はいから』

「私も――。ッ!」

愛してる。そう言おうとしたとき、チラッと窓の外に視線を向けると、一台の車が門の前に停まっているのが見えてハッとする。父の車だ。

「黒川さん、父が帰ってきたら電話ができなくなります。取り上げられたスマホを返さなきゃ」

『いいか、君は明後日、予定通りにその婚約パーティーに行くんだ。わかったな?』

「……はい」

婚約パーティーに行けって、どういうつもりなの……?

『それと、この通話履歴は必ず消しておけよ? 万が一のときの証拠隠滅だ』

「わかりました。あのっ」

最後にこれだけは、と私は彼への想いを口にした。

「黒川さん、愛してます」

『ああ、わかってる。必ず迎えに行くから』

名残惜しい気持ちを引きずる間もなく通話は切れた。

窓の外から微かに聞こえた話し声に肩を跳ねさせ我に返ると、私は急いで部屋の外でやきもきしながら待っている香帆さんにスマホを渡した。
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