授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「金田さんのことで君にお礼を言おうと思って仕事帰りにここへ寄ったんだ。けど、いくら電話をしても出ないし、なんとなく嫌な予感がして直接家に行こうとしら……さっきの男がいきなり勝手口から飛び出してきたんだ」

黒川さんが話している間にも次々と野次馬や赤色灯を回したパトカーが集まってきた。平穏な商店街が一気に騒然とした空気に包まれ、私は第一目撃者としてその場で聴取を受けた。

「菜穂!」

しばらくすると、警察から連絡を受けたベーカリーカマチの家族が全員到着し、私が無事だとわかると聖子はホッとしたのか、その場でわんわん泣き出してしまった。

「聖子、どこも怪我してないし大丈夫だから。もう泣かないで、ね?」

私は取り乱している聖子を安心させようと抱きしめ、何度も背中をさすった。

「そんなこと言ったって、菜穂が空き巣に襲われたらって……もしそんなことになったら、わ、私」

喉を引くつかせ、聖子はゴシゴシと涙でぐちゃぐちゃになった目元を袖で拭う。

「あの、すみません。被害に遭われた松下菜穂さんですか?」

不意に背後から声をかけられて振り向くと、目の前に立つ人物にギョッと目を瞠る。

うわっ! この人、お父さんの知り合いの刑事さんだ。
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