授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
長い廊下を進むと落ち着いた淡いグレーのラグの上にソファやテーブルが置かれたリビングに出た。そこには壁掛けの大型テレビがあって右手にはあまり生活感のないダイニングキッチン。間取りは3LDKで余計なものがない部屋は、まるでホテルの一室のようによそよそしい感じがした。

「適当に座って。何か飲むか?」

「いえ、大丈夫です。あの……」

やっぱりなにか怒ってる。

時折笑ってくれるものの、すぐに曇り顔になってしまうのはどうしてか、その理由を知りたくて私はソファに座り、びくびくと目を伏せて口を開いた。

「私、黒川さんになにか失礼なことをしてしまいましたか?」

「え?」

「……すみません、せっかく来ていただいたのにあんなことに巻き込んでしまって」

両膝に載せた手をぎゅっと握る。すると、黒川さんがゆるゆると首を振りながら目を閉じると静かに息を吐いた。ため息のような。

「君にひとつ、言いたいことがある」

笑みもなくひたすら生真面目なその表情を向けられる。これから冗談を言おうとしているのではないという空気が伝わってきて、緊張でドクンと胸が鳴った。
< 61 / 230 >

この作品をシェア

pagetop