授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
唇の端に苦笑いを浮かべる黒川さんに、私はしゅんと項垂れる。

「君のことが大切なんだ。だから、もう危険なことはしないと約束してくれ」

宥めるようにポンと頭に手を載せられると、じわっと涙腺が緩んだ。

「はい……ごめんなさい」

「わかればよし!」

無造作に頭を撫でられ、「大切だ」と言ってくれた彼の想いに胸が熱くなる。そして黒川さんにも心配をかけてしまったことを後悔した。

「今後、君が無鉄砲な行動に出る必要がないように俺に守らせて欲しいんだ。君のこと」

「黒川さん……」

耳に響く低い声に胸が震える。もうなにを言い渋っているのだろう。すでに心は彼に奪われているというのに。真摯な瞳に見つめられて、私は睫毛を震わせるような瞬きをした。

「私に付き合って欲しいって、前に言ったこと……本気にしてもいいんですか? だって、あのときはお酒も入ってたし……」

「お酒? はぁ、それは心外だな」

黒川さんは片手で顔を覆い、短くため息をついた。

「確かに酒は入っていたが、あの程度で自分がなにを言ったか覚えていないほど酔っぱらってたわけじゃない」
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