授かったら、エリート弁護士の愛が深まりました
「ごちそうさま。君の作ったカレー、最高に美味しかった」

「ほんとですか? 嬉しい。こんなことでよければいつでも言ってくださいね」

カレーは思いのほか大好評だった。おかわりまでして気に入ってくれたようだ。

時刻は二十時。

私も彼も明日は仕事。だんだんと家に帰らなければならない時間が迫ってくると思うと少し切ない。

「そういえば空き巣に入られた日、実はパンのお裾分けを持って行こうと事務所に伺ったんですけど、偶然ビルの下で金田さんに会ったんです。そのとき色々お話しして……黒川さんが言ってたお礼ってどういうことですか? 空き巣のこととか色々あってうっかり話を聞きそびれてしまいましたけど……」

「ああ、その件だが……」

食後のコーヒーをふたつトレーに載せた黒川さんが、ソファに座る私の隣に腰を下ろした。ふわりと香ばしい香りが鼻をくすぐり、脳からアルファ派が出て完全にリラックス状態だ。

「彼女の夫の浮気が原因で金田さんは離婚準備を進めていたんだ。そのために資金を稼ごうと夜働きに出ていたんだが……夜な夜な出かける彼女のほうが浮気をしていると夫から疑われて話がこじれてたんだ」

「金田さんの顔に痣がありますよね? もしかしてDVを受けているんじゃないかって思ったんですけど……たぶん、旦那さんに」

あまり憶測で出過ぎたことを言うものじゃない、そうわかっているけれど彼女の顔の痣がずっと気がかりで、今でも私の脳裏に焼きついていた。
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