虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
お洒落って自己満足なところが多いしね。

物語の中のアリーセは、自分の容姿が悪いと思いこみ自信の無い女性だった。

銀髪と水色の瞳がぼんやりして嫌だと悩んでいたのだけれど、私の美的感覚からすると、何を言ってるの?って感じだ。

アリーセは可愛い。本で読んでイメージしていたよりも実物はずっと美少女。

自信満々だっていいくらいなのに。自己評価が低すぎだ。

鏡に映るアリーセの顔をした自分をじっと見つめる。

侍女にお化粧をして貰ったおかげで、少し大人っぽく見えるかな。

髪は半分だけまとめて、残りは肩に流している。

「ねえ、髪型変えてもいい?」

このドレスには髪はアップにした方が似合いそう。

「え? あ、はい……」

戸惑う侍女からブラシを貰い、適当にまとめてみる。

ヘアアレンジは昔から好きで、割りと得意。

少し考えて一部編み込みを作ってふわりと纏め、ドレスの色と似た様なヘアアクセサリーで飾ってみた。

うん。かなり良い感じ。ヴェールとブーケがあればまさに花嫁。

自分のスタイリングに満足していると、侍女が困惑した様子で呟いた。

「アリーセ様、いつから髪を結えるようになったのですか?」

「え……ええと……少し前? こっそり練習してたの」

笑って誤魔化して、コートを手に取る。

小説で読んで大まかな流れは知っているけど、普段の生活の様子とか細かい描写はなかったから、知らないことも結構多い。
< 12 / 178 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop