虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない

「いたぞ!」

嘘! ついに見つかった? そんなに熱心に探さなくていいのに!


しかも相手の姿がはっきり見える程接近されてしまっている。

大柄の男三人が怒涛の勢いで近づいて来る。

ど、どうしよう。絶体絶命じゃない。
おろおろしていると思いがけない声が耳に届いた。

「リセ!」

この声は! 私は目を見開き視線を巡らす。

すると先ほどフランツ夫人が示した方向から、走り寄って来るロウの姿が視界に映った。

「ロウ!」

私は目を輝かせ、彼の名を呼ぶ。

助かった。きっともう大丈夫。

彼は私の前を通り過ぎ、そのまま男たちの方へ走っていく。

そして腰の剣を抜くと、瞬く間に三人の追手を倒してしまった。

本当に一瞬の出来事。

噂には聞いていたけど予想以上に強くて驚いた。

いろいろな要因でへたりこんでいると、剣を鞘に戻したロウが、こちらに戻って来た。

「大丈夫か?」

彼は息ひとつ乱さず、私を心配そうに見下ろす。
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