虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
疑いの視線を向けられる。その通りなんだけど、駄目なのかな?

「この都とバルテルはかなりの距離があるし、途中に広大な魔の森が広がっているんだ。リセがひとりで通過するのは絶対無理だからやめておけよ」

「魔の森?」

そんなのがあるんだ。

「魔の森を知らないのか?」

ロウが目を見開く。相当驚いているみたいだ。もしかしてこの世界では常識だったのかな?

途中までしか読んでいない小説の情報しかないから、私の知識には偏りがある。

どう誤魔化そうかと考えていると、呆れたような溜息が聞こえた。

「じゃじゃ馬かと思わせといて、そういうところは箱入りなんだな」

これ以上ぼろが出ないよう、曖昧に笑って誤魔化す。

「まあいい。とにかくバルテルに行くのは一筋縄ではいかない。余程腕に自信が有るものでなければ十分な護衛を雇う必要がある。間違っても遊びに行こうなんて考えるなよ」

「分かった」

どうやら気軽に行ける土地では無さそうだ。移住先は違う候補地を探した方がいいのかもしれない。お米に未練はあるけど。

美味しい食事を終え、一息ついてからロウに町を案内して貰うことになった。

地元ではないはずなのに彼は慣れた様子で進み、私が町に来た時に通った門の近くで足を止めた。

ここが目的地? 疑問を視線で訴える。

「リセはこの南門から来ただろ? ここを基準に説明するな」

「うん」
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