虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
ロウはすっと手を持ち上げた。門を背中に町の東方向を指している。

「あっちが今飯食った市場だってのは分るよな?」

「うん」

「町の連中と地方から来た一般人はだいたいあそこで買い物をしている」

町の端に向けて緩やかな下り坂になっている為、南門からは町を見下す形になり良く見えた。
市場は低く小さな建物が密集していて、人通りも多い。ロウは次に正面を指さした。

「真ん中にかなり広い道があるだろ。あの辺りは宿。食事をするところもある。南門に近く程高級宿になる。北門の方は安宿だがその辺は治安があまり良くないから近づかないようにしろよ」

「分かった」

あえて危ない目には遭いたくない。ロウの説明をしっかり頭に刻み込む。

「西側には、病院や騎士の詰所が。少し距離を置いて一般の家が多く立ち並んでいる。この辺りの治安は問題ない。あまり用はないだろうが」

遠目からもすっきりした印象な区画だった。住民以外にあまり人が来ないのか、市場に比べて人通りが少なそうだ。

「ありがとう。分かりやすかった」

私が用があるのは市場が多そうだ。情報を得るには治安が良くて人がたくさんいるところのがいいだろうから。

「リセ」

「どうしたの?」

妙に険しい表情だ。

「今の話、大体理解したか?」

「うん、大丈夫だけど」

「最後に“絶対に立ち入っては駄目なところ”を教えるからな。ここが一番大事だ」

真剣な声音に私の緊張感も高まる。


絶対に行ってはいけない場所ってどんなところなの?

ロウはどこも指ささなかった。ただ声を潜めて言う。

「市場の遥か先、城下町の果てのあたりに通称隔離区域がある。通常の仕事に就けない犯罪者が多く住み治安と衛生面がかなり悪くて若い女が何人も行方不明になっている」

私はぶるりと身震いした。それって殺されたりしているんじゃない?

「分かった、絶対に近寄らない」

ロウの忠告をしっかりと心に刻んだ。

その後、市場に戻り少しだけウロウロした後ロウと別れた。

別れ際に次に来た時はガーランドさんの店に寄れよと誘って貰った。



ご飯も美味しかったし、ロウは気楽に話せるし、是非行きたい。次に会うのが楽しみだった。

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