虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
私の教育もなんとか形になっていた。

と一見順調に事は運んでいたけれど、水面下では諦めずに必死に脱出を企てていた。

でも、全然駄目。
あまり仕事が出来なそうな公爵にしては鉄壁の守りで、抜け出せそうな隙がない。

結局何も出来ないまま、ついに王宮入りの日を迎えてしまった。



カレンベルク王国国王は公爵よりも年上で五十歳をいくつか過ぎていている。

王妃の地位が得られると言っても、余程権力欲の強い令嬢でもなければ、気の進まない縁談だ。

アリーセも心の中では嫌だったんだろうな。ランセルに淡い恋心を抱いていたんだものね。

それでも公爵が光栄だと喜び、自慢の娘だと言ったから、ベルヴァルト公爵家の繁栄の為にと気持ちに折り合いをつけて、国王陛下に嫁いだのだろう。

その先に悲惨な未来が待っているなんて思いもせずに。

後妻にと強く望まれたのに、国王は一度もアリーセの寝室を訪れなかった。

その噂は直ぐに広まり、捨て置かれた王妃として蔑ろにされた。

結婚してから二年間。王妃としての公務を任せられることもなく部屋に籠り、実の父親の公爵にも見捨てられひっそりと誰からも顧みられずに生きていた。

話し相手もいない孤独な暮らしは、とても辛かっただろうな。

それでも我慢していたのに、国王をたぶらかし浪費を繰り返す希代の悪女に仕立て上げられてしまうんだからひど過ぎる。

私は絶対にそんな未来には進まない。
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