虐げられた悪役王妃は、シナリオ通りを望まない
噂じゃなかったら本当に争いが起きることになるのだけど。

まさか……でもロウの様子はとても冗談を言っているようには見えない。

心臓がドキドキと波打ち始めた。

「インベルと……戦いになるの?」

ロウは険しい顔のまま頷いた。

「信憑性の高い情報を掴み王家に報告を入れている。開戦するか交渉するか対応の指示を受ける為に。だが何の返事もなく、督促してようやく来た返事は何もする必要は無しという驚くべきものだった」

「え……それは変だよね」

何もしなかったら、いざと言う時危ないんじゃないの?

「バルテルは独自の軍隊を持っているがカレンベルク王家に仕える家だ。王家の許しなく勝手に戦を始める訳にはいかない。だから俺が直接国王陛下の意思を確認する為に王都に来たんだ」

「そうだったの……」

それで夜会に顔を出したり、町をウロウロしたりしていたのかな。

「それで国王陛下には、会えたの?」

ロウの表情が曇った。

「一度目通りを許されたが、挨拶。訴えようとしても同席した宰相に止められた」

「止められた?」

宰相って、そんな権限があるの?

「国王陛下の体調が優れないからと。そう言われたら引き下がるしかない。代わりにランセル王太子に会い、バルテルの状況を訴え国王陛下への口添えを頼んだ」

「もしかして、夜会のとき?」

「そうだ」

なるほど。だからランセルと一緒にいたのか。

「ランセル王太子は頼りになりそうなの?」
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