ノクターンⅡ
22

ハワイ出発の朝、10時半頃に 軽井沢の家族は 渋谷駅に着いた。

駅前で待っている私達4人の前に スーツケースを引いて 両親と妹が歩いて来た。
 

「あっ。じいじだ。」

最初に父を見つけた壮馬が、手を振る。

父と母の希望で、子供達には “じいじ” “ばあば” と呼ばせていた。
 

「壮君。久しぶり。」
 
「絵里ちゃん、合格、おめでとう。」

父と母は、子供達を抱き上げる。

2カ月以上 受験と引越しで 軽井沢に行けなかった。
 

「じいじ。あのね 絵里加のおうち 新しくなったの。」絵里加が言う。
 
「あのね、2階もあるよ。」と壮馬も。
 

子供達を 父と母に任せて 智くんと私は荷物を引きながら 歩き出す。
 


「お姉ちゃん 松濤の豪邸に住むなんて どんどんセレブ化しているね。」

妹が笑いながら、私達に言う。
 

「豪邸じゃないよ。普通の一戸建てだからね。」智くんも 笑って答える。

繁華街の喧騒を抜けると 唐突に住宅街が表れて まもなく私達の家に着く。
 

「じいじ。ここだよ。」壮馬が言う。
 
「素敵なおうちじゃない。麻有ちゃん。」

母は 歓声を上げる。智くんと私は、微笑む。
 


「お姉ちゃん、赤のレクサス 誰の?」

妹は目敏く 新車を見つける。
 
「駐車場が増えたから。私用に買ったの。」
 
「お兄さん、甘やかし過ぎじゃない。」

妹に言われてみんな、笑ってしまう。


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