ノクターンⅡ

「そんなに褒めないで下さい。私 いい気になっちゃうから。」

私は小さく言う。
 
「可愛いでしょう。これだから 頑張る訳よ 俺も。」

智くんが言う。最近は 堂々と。
 


「まあね。のろ気られても仕方ないね。智之の自慢の奥様だからね。」お父様が言う。
 

「私 智之さんの奥様が 麻有ちゃんじゃなかったら 紀之さんと一緒に仕事してほしいって 思わなかったわ。」



お姉様の温かい言葉が、胸に沁みる。
 

「だめ。涙出そう。」私は 俯いて言う。
 

「麻有ちゃんは、泣き虫だからなあ。」

お兄様に言われる。


みんなに守られている幸せに そっと頬を膨らませ、
 

「大丈夫です。」と顔を上げる。

泣き笑いの私に、みんなが笑い、
 

「確かに、いつまで経っても 可愛いわ。」

お母様に言われる。

満足そうに微笑む智くんは、
 

「でしょう。」とみんなに言った。
 

子供達は、4人で賑やかに遊び その笑い声が響く。

そして 私達は、どんな事でもオープンに話す。


お兄様の冗談に笑いながら。

みんなが 自分以外の人を 思いやり 力になろうとする。


そこには、嫉妬とか 羨望とか 負の感情がない。


心から、家族を大切に思っている。


それくらい、豊かで。
 
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