きっとこれは眠れない恋の証明。
「桜ちゃんがずっと信じてあげてくれていたからよ、ありがとう」
京のお母さんから、何度も何度も泣きながらそうお礼を言われた。
当の本人は未だいまいち状況を掴めていないようで、ただただぼろぼろと涙を流す私達をみて戸惑いを隠せないような表情でいるのだから堪らない。
泣きじゃくっている為に嗚咽やら涙やらで上手く話が出来ない女性陣に代わって、羽水社長が京に、京が一年間この病室で眠ったままでいた事を説明してくれた。
ようやく全てを理解したらしい京は、驚いたように目を見張って──…そして、涙を引っ込めようと必死に目を服の袖で拭う私の頭の上にその左手を乗せた。そして、そのまま優しく私の頭を撫でてくれる。
そして、見た事がないような、今までで一番優しい顔をして、思わず俯く私の顔を覗き込むようにして微笑みかけられた。
「待っててくれてありがとう、桜」
ありがとう、だなんて。
お礼を言うのは私の方だ。
京、ありがとう。あの日、私を助けてくれてありがとう。守ってくれてありがとう。生きていてくれてありがとう。
そう言いたいのに、堰を切ったように涙が次から次に溢れて、声が震える。
ずっと京に言いたかったお礼は、思うように上手く言葉にできなかった。