二度目の結婚は、溺愛から始まる


「…………」

「わたしがいないと、十五分もせずに帰っていたのよね?」

「…………」

「そんなにわたしのことが好きだったなら、どうして声をかけてくれなかったの?」

「…………」

「ねえ、蓮?」


蓮の頬骨のあたりが薄っすら赤くなっている。
思わずにやけたら、むっとした蓮に噛みつかれた。


「……おまえは、しゃべりすぎなんだよ」

「そん、なっ……」


わたしを抱えたまま立ち上がった蓮は、続き部屋のベッドに直行する。

いつもより、だいぶ執拗なキスをされ、クタクタでとろとろに溶けたところで、ようやく優位を取り戻した蓮が耳元で囁いた。


「返事は?」

「へん、じって……何の返事?」


すでに思考回路が崩壊しているわたしが問い返すと、蓮は悲痛な声で叫んだ。


「プロポーズのだっ!」


指輪も嵌めたし、お互い裸。
こんな状態で、いまさら返事なんて必要ないのではないかと思ったが、言葉で伝えるのが大事なこともある。


「わたし……蓮以外とは、キスしたくないし、セックスもできないし……蓮以外は愛せない。蓮を幸せにしたいの。だから……わたしと結婚して?」

「返事は、『はい』か『いいえ』だろ」

「それだけじゃ、はずみで返事をしたかもしれないと不安にならない?」

「…………普通は、はずみで返事はしないだろ」

「でも、酔った勢いってこともあるでしょう?」

「おい、まさか酔ってるんじゃないだろうな?」

「泥酔ではないわ」

「……何本飲んだ?」

「三本よ」

「瓶で?」

「そうよ。ねえ、結婚するの? しないの?」


わたしを見下ろす蓮は、泣き笑いの表情で呟いた。


「まったく……どうしようもないな。おまえは」

「それって、どういうい……」


優しいキスでわたしの唇を塞いだ蓮は、この上なく優しくて、甘い言葉を囁いた。



「……どうしようもなく、椿を愛しているって意味だ」


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