二度目の結婚は、溺愛から始まる
うっとり見つめている間に、蓮はまず梛と花梨から。次に蒼と紅さん、征二さんから。続いて、わたしの家族、蓮のご両親、そして最後に涼と愛華から受け取って、愛華に手伝ってもらいながら、手にしていた赤いリボンで花束にした。
目の前にいる、色とりどりの薔薇の花束を手にした蓮は、ぼんやりしているわたしに微笑みかける。
「起きてるか? 椿」
「お、起きてるわよ」
「プロポーズしてもいいか?」
「はい?」
プロポーズなら、もうしたはずだ。
何と言っても、すでにわたしたちは二度目の結婚をしている。
わけがわからず戸惑うわたしに、蓮は真顔で宣言した。
「花が足りなかったからな。やり直す」
「え?」
「降っても、晴れても……雨の日も、晴れの日も、変わらず傍にいて、一緒の人生を歩んでほしい。もし答えがYESなら、俺が捧げる十二本の薔薇の中から、一番大切にしたいと思う気持ちを選んでくれ」
受け取った薔薇たちには、小さなタグが付けてある。
感謝、誠実、幸福、信頼、希望、愛情、情熱、真実、尊敬、栄光、努力、永遠。
迷い、悩んだ末、どれか一つと言われても選べないと思った。
「そんなの無理よ」
「ちょ、ちょっと椿っ! 何を言い出すのよっ!」
傍らで見守っていた愛華が慌てふためき、小声で叱咤する。
蓮は、じっとわたしを見つめ、続きの言葉を待っている。
「だって……一つじゃ、足りないわ。降っても晴れても……雨の日も晴れの日もずっと一緒にいるのなら。この先、何十年も一緒に過ごすなら、大切にしなきゃならない気持ちは、一つじゃ足りないでしょう? いいところも悪いところも、きれいな気持ちも醜い気持ちも……蓮がくれるものは、全部必要なものなのよ」