パステルピンクの中で
「キレイだなぁ……」
あの時と同じ、パステルピンク。
周りの木も、同じようにパステルピンクが彩っている。
「ああ」
桜を見上げたまま、頷いた彼。
横を見ると、わたしより背が高い、彼の横顔。
彼の黒々とした瞳の中に、うっすらとパステルピンクが入っていた。
わたしは無意識に彼から目をそらし、地面を見た。
やっぱり、石畳にある桜も変わらない。
見上げるとパステルピンクがブラウンを彩っていて、見おろすとグレーを彩っている。
わたしは、また木を見上げた。
不意にあの時のことを思い出し、わたしは小走りで木の元へ行った。
「よし、登ってみよう!」
そう言いながら、わたしは枝に足を引っ掛けた。
「いや、明日乃。またかよ……」
わたしの様子を見て、雨月くんは冷や汗をかく。
「いいからいいから! 他にも木があるんだし、雨月くんも登ってみたら?」
「じゃあ、隣の木」
雨月くんは、わたしが登ろうとしている隣の木に登り始めた。