熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 


「ぽ、ぽん太さん……!?」


 現れたのは、ぽん太である。

 ふよふよと宙に浮く姿はまるでシャボン玉さながらだが、浮いているのがたぬきとあっては儚さは感じられない。


「どうしたんじゃ、そんなに驚いて」

「だ、だから! 心臓に悪いから、突然現れないでください……!」


 花の抗議に、ぽん太は「おお、すまんすまん」と口では言いつつ、大して悪びれる様子はなかった。

 そもそも、この家にプライベート空間はないのか。

 花は頭を抱えたい気持ちになったが、付喪神相手に"人の常識"を述べること自体が、無駄なような気もしてくる。


「熱海はいいところじゃぞー。温泉最高、海の幸満載、見どころたっぷり、言うことなしじゃ!」


 嬉々とした表情で言うぽん太は、花の座る隣へと着地した。

 
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