熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「あの、ぽん太さん……これは提案なんですけど」
「なんじゃ、まだ何かあるのか?」
「これからする熱海観光、ちょう助くんも一緒に連れていくことってできないですか?」
花の突飛な提案に、ぽん太が目を丸くする。
花自身も咄嗟に思いついたことで、なんの計画性もない提案だった。
「あの、その……こういうのって、たくさん人がいたほうが楽しいだろうし」
「しかしお前さん、今朝方ちょう助と揉めたばっかなんだら?」
確かにぽん太の言うとおり、花はちょう助とつい数時間前に揉めたばかりだ。
厨房から締め出され、取り付く島も与えてもらえない状況だった。
「はい……。でも、だからこそ、なんとかして仲直りがしたいというか。もう一度、どうしてもきちんと話がしたいんです。だから、どうにかなりませんか、お願いします!」
ぽん太を前に、花はペコリと頭を下げた。
仮にもし、週末の虎之丞へのもてなしが無事に済めば、花は一年もの長期間、つくもで仲居を務めることになる。
その間、唯一の仲居である花が厨房へと入らずにいるなど到底無理な話だろう。
配膳もしなければならないし、何か緊急時には手伝いが必要なときもあるかもしれない。