熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「まぁ、その地の食べ物を楽しむのも、観光の醍醐味じゃしの」
「……活きあじフライは、熱海の定番料理のひとつですしね。海産物が豊富な熱海ならではの新鮮なアジフライは、絶品だと俺も思うよ」
梅もなかの最後の一口を食べ終えたちょう助も、納得の様子で頷いた。
(絶品のアジフライ……)
またゴクリと喉を鳴らした花は、頭の中でアジフライの揚がる様子を想像した。
「よし。それじゃあ次は、その"てんすけ茶屋"で腹ごしらえといこうかの」
「大賛成ですっ‼」
思わず飛び跳ねた花を見て、ぽん太はフォッフォッと笑ったあとで甘酒を喉の奥へと流しこむ。
そんなふたりを横目で見るちょう助は、ふぅ、と小さく息を吐き、「仕方がないなぁ」と溢して立ち上がった。
♨ ♨ ♨
「てんすけ茶屋って熱海サンビーチの近くだったんですね」
目的地のてんすけ茶屋までは、ぽん太の抜け穴ではなくバスを乗り継いでやってきた。
花が住んでいた都心に比べバスの本数は少ないが、こうした移動時間も旅の醍醐味のひとつとぽん太が進言したためだ。
実際、ぽん太の言葉の通り、初めて見る昼間の熱海の街並みは、花の目には新鮮だった。