熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「あ……」


 そのとき、花は鏡台の片隅に置いてあった携帯電話のお知らせランプが光っていることに気づいた。

 何の気なしに手を伸ばすと、それを手に取り電源ボタンに指を乗せる。

 考えてみたらつくもに来てから、父に仕事が見つかったと連絡したくらいで、その後は誰とも連絡を取っていなかった。

 久しぶりに画面をタップすると充電はまだ20%ほど残っており、電波も変わらず届いているようだった。

 加えてよくよく見てみれば、学生時代のグループメッセージでは友人のひとりに子供が生まれたという話題で盛り上がっている。


「みんな元気そうだなー」


 生まれたばかりの赤ちゃんの写真や、結婚して海外で内々に挙式を挙げた友人からの幸せそうな写真。

 子供の成長を知らせるメッセージや写真を流し読みながら、花は思わず微笑んだ。

 花がつくもに来てから、早二ヶ月以上の月日が経っている。

 その間にも現世では様々な変化が起こっており、変わらないのはここにいる自分ひとりのような気がした。

 
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