熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「……返事、遅れてごめんね。みっちょん、子供産まれたんだね、おめでとう! ……あと、ユミは改めて結婚おめでとう。ウエディングドレス、すごく良く似合ってるね──」


 友人たちへのお祝いの言葉を返信しながら、ふと指を止めた花は一瞬の間を空けて──呼吸をするように、自嘲した。

 自分だけが、彼女たちに何ひとつ報告できることがないということに気がついたのだ。

 自分だけが立ち止まっていて、どんどん置いてけぼりになっていることに気がついてしまって、心に重石が落ちてきたように気持ちが沈んだ。

 いや……実際は、花にも報告しようと思えば報告できることもある。

 けれどまさか、【不倫未遂を起こして会社を自主退職するはめになり、実家に帰る途中で立ち寄った熱海で紆余曲折あって死後の地獄行きを避けるために付喪神専用の温泉宿で働くことになりました──】なんて爆弾を、幸せムードが溢れる会話の中に落とせるわけがなかった。

 
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