熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「ちょう助くん……! 仕事終わりにごめんね、今から少し話せるかな……!?」
「え……花? どうしたの?」
そうして花は厨房に着くなり明日の仕込みをしていたらしいちょう助を捕まえると、ふっと何もない宙を見上げた。
「ぽん太さん、黒桜さん! 聞こえますか!? 今から厨房に来れませんか?」
花が呼びかけると、ポンっ!という効果音とともに、まずはぽん太が現れた。
どういう理屈なのか花も未だによくわかっていないのだが、こうしてつくも内で呼びかければ必ずふたりには花の声が届くのだ。
「なんじゃ花。まだ寝ておらんかったのか」
大きなあくびを溢したぽん太は、どうやら就寝間際だったようで大きな枕を抱えている。
「花さん、夜更かしは美容の大敵ですよ?」
続いて、ふらりと黒桜も現れた。
黒桜はまだちょう助と同じように仕事をしていたのか、いつもどおりの飄々とした様子で、花を見てコテンと首を横に傾げた。