熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「いや、そなたの想いを聞き、よりここが素晴らしい場所だと再認識できた。ありがとう」
薙光は決して怒ることはせず、花の話をきちんと受け止めてくれたようだった。
それだけでなく、「ありがとう」と言葉にした薙光を前に、懐の深さと器の大きさを花は感じずにはいられなかった。
「そんな……。こちらこそ、ありがとうございます」
改めて花がお礼を口にすれば、薙光は笑顔で花の気持ちを受け止めた。
その──薙光の応対を見て、言うなら今しかないと花は思った。
「あの……それで、薙光様。本日のご夕食についてのご案内が遅くなってしまい、申し訳ありません」
ドクドクと、花の心臓が早鐘を打つように高鳴り始める。
「本日のご夕食なのですが、今日は皆様に喜んでいただくべく、つくもに仕える一流料理人が作り上げたデザートバイキングをご用意させていただきました」
「デザート、バイキング?」
ようやくここに来た一番の目的を口にした花は、高鳴る鼓動を落ち着けるように息を吐くと真っすぐに薙光を見つめた。