熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
「さぁ、花。もう一度、薙光殿に今回のお料理がどのようなものであるか説明を」
「……っ、は、はい!」
そして、そこまで言った八雲は、斜め後ろで震えていた花の肩にそっと手を当てた。
そこから先の説明は、花がするべきだという八雲の判断だ。
『大丈夫だ、俺がついている』
肩に触れた八雲の手から、不思議と八雲の気持ちが伝わってきたような気がして花の顔は自然と前を向いた。
(……大丈夫)
胸に手を当て、一度だけ小さく深呼吸をした花は、改めて真っすぐに薙光の目を見つめる。
「──まず、薙光様。失礼ですが薙光様は先程、スイーツは女性が好むもので、名刀である我々には不釣り合いだ……というニュアンスのことを仰っしゃいましたが、そこから否定させてください」
「……なんだと?」
心を奮い立たせ、自分と堂々と対峙した花を前に、薙光は驚いて目を見張った。
「デザートバイキングは確かに、女性をターゲットとしたものが多いのも事実です。けれど現在では男性でもデザートバイキングに友人連れで訪れることは決して珍しいことではありません」
巷ではスイーツ男子という言葉もあるほどだ。
男同士でカフェを訪れ、甘いパンケーキを嗜むというのも今では極々普通のことだった。