熱海温泉 つくも神様のお宿で花嫁修業いたします
 

「ところで、薙光様。薙光様は、熱海はだいだいの生産量が日本一であることをご存知でしょうか」


 話の趣旨を戻した花は、再び笑みを浮かべて薙光を見据えた。

 不意をつかれた薙光はまた驚いたように目を見開くと、戸惑いを滲ませた声で花の質問に答えてみせる。


「だいだいの生産量が……? 無論、知っておる」

「さすがでございます。私達は薙光様にご予約をいたただいてから今日まで、どのようにすれば皆様に最高のおもてなしができるかを考えておりました」
 

 花の言葉の通り、花はデザートバイキングをすると決めてから、毎日時間があれば何か良いアイデアがないかと試行錯誤し続けた。

 だいだいについても勉強をしたつもりだ。

 その他、デザートバイキングの内容も、いくつもの資料やインターネットの情報を駆使して、ちょう助と話し合いを重ね続けた。


「熱海産のだいだいこそ、今回のデザートバイキングの(かなめ)なのです」


 花の言葉を聞いた薙光が、また難しい顔をして黙り込む。

 薙光は先程から、花の真意を慎重に探っているようだった。

 
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