悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
「それはね、あなたがよくやっているからよ。ソニア――私達は、怠け者の使用人は首にするけれど、よくやってくれる使用人には報いるものなの。あなたが、ティーナに大切に仕えてくれるから、私達もあなたを大切にしようと思うのよ。わかる?」
「で、でも……お嬢様は、私の恩人で……!」
「それを忘れなければいいわ。あなたがティーナに忠誠を誓ってくれる限り、私達もあなたの味方だから」

 ――初めてだった。
 父はレオンティーナのことを、”ティーナ”と愛称で呼ぶことが多いけれど、前世でも今回の生でも、母にそう呼ばれた記憶はなかった。

(……いやだわ、私)

 母に愛称で呼ばれたくらいで、どうして目のあたりが熱くなっているのだろう。瞬きをして、涙を追い払おうとする。

「――ティーナ」

 耳に響く優しい声は父のもの。

「君は、私達の誇りだよ、ティーナ」

 こんな風に、名前で呼ばれたことなんてなかった。
 レオンティーナは父がハンカチで目を押さえてくれるのを黙って受け止めた。
 ひょっとしたら、今、人生が変わろうとしているのかもしれない。


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