悪役令嬢は二度目の人生で返り咲く~破滅エンドを回避して、恋も帝位もいただきます~
 レオンティーナが差し出したハンカチは、白いシルクに金糸でレオンティーナの名を刺繍したものだった。落としても落とし主がわかるようにとのことだったが、日常使いの品だ。

「どうか、この娘のことはお気になさらず。ほら、もう行きなさい」

 ハンカチは受け取らずに、ソニアはぱっと走り去ってしまった。その後ろ姿を見送り、レオンティーナは嘆息した。

(どうやら、やり方を間違えてしまったようね……)

 ソニアを驚かせるつもりはなかったのだ。
 前世のことはおくびにも出さず、うまくやるつもりであったけれど、ソニアを怯えさせただけで終わってしまったようだ。

「――施設長、急に来てすまない」

 不意に声変わり前の少年の声がして、レオンティーナは振り返ったところで固まった。

(――嘘でしょ!)

 と、心の中で叫んだのは、そこに立っていたのがヴィルヘルム――未来の皇太子――だったからだ。
 ヴィルヘルムは、前世でも心優しい少年として有名であった。だが、彼の優しさは弱さの裏返しでもあった。荒れる国内に自ら立ち向かうことなく他国の力を借り、そしてこの国の破滅を招いている。

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