エリート御曹司が花嫁にご指名です
 私の剣幕に、優成さんは肩をすくめてみせる。

「俺たちは婚約をしているんだ。就業時間も過ぎている。見せつけても構わないだろう?」

 見せつけても……? 単なる言葉のあや?

「ほら、来たぞ」

 エレベーターが到着して、私を先に乗り込ませた優成さんは、地下一階を押した。



 優成さんは誕生日に連れていってくれた、あの素敵な高級レストランの駐車場に車を停めた。

 白と黒を基調としたシックなインテリアに、高い天井は開放感があるレストランだ。夏の昼間に来て以来の今回は、停泊しているクルーザーはほんのりライトで照らされ、ムードある雰囲気を醸し出している。

「夜も素敵ですね」

「ああ。いい感じだ」

 シーフードのコース料理が出される中、私は西尾さんのことを口に出すか迷っていた。でも、結局はこの時間をダメにしたくなくて、別の話を振る。

「海を見ると、宮古島を思い出します」
「俺もだ。実は本気でヴィラを考えているんだ」

 先日訪れたプライベートが保てるラグジュアリーなヴィラは、富裕層にしか需要がないかもしれない。でも、もう少し利用者の幅を広げる対策を打ち立てれば、特別感のあるヴィラは今後の需要も見通せるかもしれない。

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