エリート御曹司が花嫁にご指名です

優成さんはまだ着いていないわね。
　
　別れ際の車内でのキスを思い出して、唇へ指先が伸びる。まだ唇が熱を持っているようだ。
　
　彼のキスは私の心臓を苦しいほどに高鳴らせるけれど、私は……？　優成さんはどんな思いで、キスをするの……？

「はあ～」
　
　私の口から重苦しいため息がこぼれる。
　
　優成さんは子供が欲しいと言った私に、協力してくれているだけ。高望みしてはいけない。

　いろいろと理由づけて、自分に言い聞かせても、優成さんと昔の恋人が一緒にいるのを見て、ショックを受けている。そのせいで今も、心の中がモヤモヤしている。

　そして、言いだせない自分にもイライラしていた。