エリート御曹司が花嫁にご指名です
「本当に……見たの……?」

 そう聞いてから、尋ねる自分に嫌悪する。

 優成さんは子供が欲しい私に協力しているだけ。彼が別の人を好きになっても、なにも言えない。

「はい。ランチの後、第二会議室へ行ったんです。そうしたらおふたりが。私はすぐに隠れたんです。でも、桜宮専務は気づいたのだと思います。だから、私に見せるように、秘書室であなたと。あのときの話し方は、まるで口止めをするみたいでした」

 宮本さんの話を嘘だと思いたい。けれど、過去、あのふたりは恋人同士だった。それに、昨日のことがフラッシュバックする。

 優成さんは『見せつけても』と言ったのだ。それがなにを意味するのかわからないけれど、宮本さんに、優成さんは私に夢中なのだと思わせたかったのかもしれない。

「……ごめんなさい。頭が混乱して……戻るわね」
「はい。浮気を許したらいけないと思うんです。私は一条さんの味方ですから」

 私の頭の中は霞がかかったようになって、ふらふらと秘書室へ戻る。
 
 宮本さんの言葉は本当なの……?

「汐里さん、おはよう」

 まっすぐいつもの席に向かう私に声をかけたのは、三和子さんだった。


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