エリート御曹司が花嫁にご指名です
「一条さんがよければいいですが」
「はい。私に行かせてください」

 そう答えて、南場秘書室長のデスクに歩を進めた。

「では、お願いします。こちらが書類になります。訓練部の河合(かわい)部長に渡してください」
「かしこまりました」

 訓練部へ行ったからといって、どうすることもないけれど、西尾さんをもう一度見てみたい気持ちはあった。

 書類を手にして席に戻り、専務室の宮本さんへ内線をかける。

『はい。宮本です』
「一条です。書類を届けに、一時間ほど席を外します」
『わかりました。行ってらっしゃいませ』

 宮本さんの明るい声が聞こえて、内線を切った。


 羽田空港駅より手前の駅にあるわが社の訓練施設へは、何度も来ている。ここには寮もあり、未来のCAたちが日々訓練に奮闘していた。

 広い敷地には、八階建ての建物の中に、フライトシミュレーターや、機体客室内部を再現した模型などがあり、各種の訓練に必要な機材実践や座学をここで受ける。

 私は出入口に立つ警備員にIDを見せ、建物内へ入室する。

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