エリート御曹司が花嫁にご指名です
「汐里、チョコは好きだろう? これをいただいたから、後で食べるといい」

 桜宮専務は俳優さながらの甘い笑みを私に向けて、大塚さまからいただいたショッパーバッグを持たせた。

 彼の麗しい笑みを見せつけられて、私は平常心を保つのに必死だ。

「大塚さま、わざわざ彼の手の傷を心配してくださり、ありがとうございました。私が毎朝消毒しましたので、すっかりよくなりました。もうお気になさる必要はありません」
「そ、そうでしたの……お、お礼を言いたかったんです」

 動揺を必死に隠そうとしている彼女は、もう一度、桜宮専務に熱い視線を送る。

「来ていただいたのに申し訳ない。これから会議があるので」

 微かな期待をしている大塚さまが、大きく肩を落としたのがわかった。

「では、またバーでお会いできたら嬉しいですわ」

 小さく微笑みを浮かべて、彼女は残念そうにドアのほうへ向かう。

「ひとつだけ……」

 桜宮専務は帰ろうとした彼女の背中に声をかけた。

「は、はい!」

 嬉しそうな声が執務室に響く。

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