エリート御曹司が花嫁にご指名です
「汐里が食べてくれ」
「それは……ちょっと……」

 彼のために選んだチョコレートを、無神経に食べられるわけがない。

「なら、ごみ箱に捨てろ」
「それも……」

 もったいない……。ショコラティエが丹精込めて作ったものだから。

「汐里はどうしたいんだ?」

 わけがわからないと、桜宮専務は眉根を寄せて首を傾げる。

「……私はいただきませんが、秘書課で」

 もらった理由を話さずに食べてもらおう。

「それでいい。もうすぐ広報課から色校が送られてくるだろう。それを役員分コピーして、資料に挟んでくれ」

 仕事モードに切り替わった桜宮専務に、私は気を引きしめ、「かしこまりました」と返事をして、専務室を退出した。 

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